雪のように降り積む日々の合間で

気の向くままに想いを書き綴る

『考えに考え抜いた選択の果ての悲劇と、一ヶ月間の苦闘』【時間を】ゲームレビュー:ワンダと巨像【返せ】

 今から50日程前、とあるゲームの約10年ぶりの最新作が満を持して世に放たれた。

 

 そう

 

KINGDOM HEARTS


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楽しみにしていた人も多いのではないだろうか。僕もその一人だ。僕がこのシリーズをプレイしたのは中学二年のとき、KINGDOM HEARTS 358/2days(キングダムハーツリーファイブエイトデイズオーバーツー)が初だったのだが、開始数分にしてゲームの世界にどっぷりと沈み込んだのを覚えている。

 

何せ(以下引用)、

 

哀れ
心無きハートレスは心を集める
怒りのキーブレードは
心を解き放つ
心は闇に集い
やがてキングダムハーツとなる
主をなくした人の心が織りなす
キングダムハーツ
我らはキングダムハーツと共に
完全な存在となる

 

 開幕(のっけ)からこれである。純粋な中学二年生が嵌まるのも、致し方ないというものだろう。(余談だがこの文句、某ブリテンの騎士たちのような椅子に座った””機関のメンバー””を順に写しながら唱えられる。もうこのシーンが辛抱堪らん過ぎて、今書いているネット小説でオマージュ的な要素を取り入れたりもした(その実ただ単に時計を模した円形の空間でキャラが順番に喋るだけだが)。余談の余談だが、そのネット小説がKADOKAWA主催のwebコンテストで中間選考を通過した。少しでも興味のある方は是非ご一読をば。いくらなんでも宣伝が強引すぎる。リンク→https://kakuyomu.jp/works/1177354054885814119)

 

 今振り返ってみるとKINGDOM HEARTSシリーズに当時の僕が感じたのは洗練された厨二であった。あと徹底的なシリアス。話題は逸れるがこのシリーズ、ナンバリングよりも「外伝」の方が多く出ていて(冷静に考えてみると意味不明だ)、そして外伝のストーリーは本編と複雑怪奇に絡み合っているのだ。ここがミステリー好きとしては本当に堪らなくて、錯綜する視点や時系列、(若干後付け感は否めないが)鮮やかな伏線回収と、構成が映えていたと思う。

 

 世間では「何かディズニーキャラが出てくるRPG」とか思われていそう(プレイする前は僕もそう思っていた)だが、良質なエンタメ顔負けの濃厚なストーリー展開が楽しめる作品でもあるのだ。(勿論ディズニーファンの人でも楽しめる、因みに僕はディズニーランドは五歳以来行っていないし、チップとデールの区別もつかないが、キングダムハーツは楽しめたのでディズニーとか……みたいな人でも楽しめると思う)(個人的にお薦めしたいのがシリーズの始まりを描いた『Birth by Sleep』という作品、主人公が三人いて全員分プレイして初めてストーリーの全容が解るという凝った構成、宛ら良質なミステリーのようだ)(あと展開も結構切なくてやるせないのが多い、前述した358/2daysのエンディングとか今までプレイしたゲームのエンディングの中でも群を抜いて好き)

 

 本当は延々と括弧をつけて破綻した論理展開と低い語彙力でKINGDOM HEARTSに対する愛を語っていたいのだが、そうはいかない。心を鬼にして最近プレイした(自分)史上稀にみるレベルのゲームのレビューをしていかなければならない。それがこのゲームに約一ヶ月を費やした僕に可能な細やかな「報復」なのだから。

 

 冒頭に戻る。

 事の発端はそう、KINGDOM HEARTSⅢ発売から三週間ほど前に遡る。当時の僕は迷っていた。思い入れのあるシリーズだし、キングダムハーツ3(これからはこの表記で統一)はプレイしたい。だがPS4を買ってまでやりたいかと言われると……

 

 悶々とした気分で電気屋のゲームコーナーを彷徨いていた僕の思考は、暫しフリーズする。

 


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1.5000円引き←まあ解る

 

2.ソフト二本無料←いや意味が解らない

 

 

頭で損得勘定するより先に僕はPS4 250GB(色:グレイシャーホワイト)をひっ掴み、脇目も振らずレジへと向かった。(僕は据え置きゲーム機は黒派なのだがこの時ばかりは何故か白を選んだ)

 

「いい買い物をしたな……」

 その先に待っている悪夢を知らずに、僕は嘗てない満足感と共にがらんどうの年始の電気屋を去った。

 

……さて、問題となってくるのは此処からだ。

 

””このゲーム””は既に始まっている。

 

そう、

 

「無料ソフト21本の選択肢の中からどのゲームを選ぶか」

 

 この選択は何よりも重要だ。

 

折角得をしたのに、此処でクソゲーを掴まされようと言うものならその落胆は計り知れない。例えるならそう、””ソシャゲのアニバーサリーログインで貰った十連石でガシャを回したらSR一枚(被り)だった””かのような、形容しがたい絶望に襲われるくらいなら、買わない方がマシなのだ。得をしない方がマシなのだ。

 

 思えば人間とは不思議なもので、「得をすれば得をするほど」「手にいれれば手にいれるほど」、より多くを欲するようになるらしい。人間の欲求には制限がない……

 

まあそんな行数稼ぎの文章はどっかの小説にでも書くとして、ゲームの選択の話だ。

 

浅ましい話だが、まず僕が考えたのは「二本とも元値が高いソフトを選ぶ」。金は正義。拝金主義とは行かないものの、僕とて資本主義の犬なので、真っ先に考え付いたのはこれだった。

 

単純計算で一本5000円のソフトを二本選べば、本体価格5000円引き分と合わせて15000円分得をすることになる。普通に買ったときと比較して、この””差””は大きい。

 

だがここで思考を放棄するようなら二流、いや三流と言わざるを得ない。

「高いものだから良いものに違いない」

 そんな単細胞思考に拐かされるほど馬鹿ではなく、そんな単純思考を受け入れられるほど賢明ではないのだ、僕という人間は。

 

 一番重要なのは、何よりも重要なのは、自分が最大限楽しめるソフトを選ぶこと

 そこに金銭が絡む余地はない。粗製乱造が罷り通るこの大量消費社会、どこでどんな代物を掴まされるか解ったものではないのだ。値段は数ある尺度の一側面に過ぎない。自分が気に入るか否か、強いて言うならばそれこそ何にも勝る「尺度」だ。

 

 その瞬間、その人生から考えれば数瞬にも満たないであろう数分。僕は恐らく生まれて初めて「経済学」とやらに魅せられたのかもしれない。

 

今こそ思考の全てを費やし「理想の選択」を掴みとるとき。効用(この言葉の意味もろくに解っていない)を最大化するとき。余りにも利己的で余りにも低俗な、孤独な闘いが始まった。

 

 

 

まず「前提条件」から考えてみよう。21本のゲームから2本を選ぶ。その組み合わせは21C2=210。手狭な脳内を210もの膨大な数が駆け巡るものの、混乱するばかりで「答え」は未だ見えない。

 

まず候補を絞る必要性に迫られた。消去法。その有用性は主にセンター試験の国語等で身に染みついている。

 

パッとラインナップ↓を眺めてみる。


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そして「明らかに低予算だなこれは(失礼)」という五本を除外。唯一迷ったのは『風ノ旅ビト』だが(タイトルを小耳に挟んだことがあったので)、値段を調べてあっさり切る。残りのタイトルを列挙してもいいが、面倒なのでやめる。まあ大体観れば解るでしょう(リトルビックプラネット3はトラウマゲーと観た)。

 

さて、更に絞り混んで行こう。

次に消すべきは「シリーズもの」である。確かに二作セットで買えば””お得感””はあるかもしれないが、折角ならどちらも違う系統の作品にした方が楽しめると踏んだ。仮に一作買って面白かったら続きを買えばいい。そんな考えもあったかもしれないが、この駄文を打っているときには恐らくは忘却の彼方に消え去っている。

アンチャーテッドGRAVITY DAZE削除。ついでにラチェット&クランクもシリーズっぽいので。GRAVITYは割りと評価が良かったし女の子が可愛いのでいつか触れてみたさはある。

早くも残り10本、半分を切った。ここまで二分と時間を掛けていない。我ながらなかなかいいペースである。

 

ゴルフも車の運転にもあまり興味がない。みんなのゴルフGRAN TURISMO削除。これで残り8本。

 

膨大だった組み合わせも何のその。今では8C2=28。ここからは慎重に行こう。

 

さて……ラインナップを目を皿のようにして眺める。

そして右下端の三つのタイトルの「不可解性」に違和感を覚える。

何というか……パッケージを見ても「そそらない」のである。まぁ、僕はパケ買いに拘る方ではないし、寧ろタイトルの雰囲気や煽り文句に乗せられて買うタイプではあるのだが……(主に本の話)、その三本は「これがどういうゲームなのか」があまり伝わってこなかった。訴求力、求心力がなかったと言えばそれまでだが、タイトルも英語の羅列でどれも同じようにしか見えない。アサシンクリードだかコールオブデューティーだかなんだか知らないが、洋ゲーはどれも一緒にしか見えなかった(好みの問題だ)。

 

ということで3本纏めて候補から外す。これで残りは5本。いよいよ大詰めだ。犯人を怒濤の勢いで追い詰める名探偵のように、消去法推理、いや論理を脳内で構築していく。

 

さて(探偵の一言目はこれと相場が決まっている)、その時点で一番僕が気になっていたのは「Horizon」というソフトだ。上段の左から三番目、澄んだ色のパッケージに描かれた謎の機械と、そして凛々しい表情の女性。先ほどの三作と比べ、とても「そそる」パッケージと言えよう。ストアで詳細も観たところ、「荒廃した未来世界で謎の機械獣と戦う孤高の女狩人を待ち受ける運命とは――――」(大分曖昧だがこんな感じ)と、期待以上の売り文句。かつてDLCとして販売されたらしい追加シナリオも併録されており、ボリュームも文句が無さそうだ。これは””買い””だ。

そう思って「一作目」としてカートへ入れかけたそのとき、Horizonの右隣にある作品タイトルに目が釘付けになった。

 

ワンダと巨像 

 

ワンダトキョゾウ

 

わんだときょぞう

 

これは……何という「郷愁」を感じさせるタイトルなのだろうか。いや、それだけではない。ただ名詞と名詞を「と」で繋げただけでここまでの奥ゆかしさを感じさせるのは、ただ事ではない。

 

パッケージのインパクトも凄まじい。巨大な怪物に勇ましく立ち向かう剣を手にした青年の姿。それはとうの昔に喪ったはずの「少年の心」とやらを僕の心に呼び覚ました。

 

「喪われた少女の魂を呼び戻すためには、古の地に眠る十六体の”巨像”を倒さなければならない」(うろ覚え)

 ほう。

 

「巨像にはそれぞれ特性があり、知恵を絞って討ち果たす必要がある」(こんな感じ)

 ほうほう。

 

「伝説の名作ゲームが今、美麗なリマスターグラフィックで甦る!」(名作とやらのリメイクってほぼ全部これ書いてないか)

 ほうほうほう!

 

 何というか、””魅せられた””。他にも、「美しく繊細なグラフィック」「心を打つ切ないストーリー」、そしてとどめに、「エンディングまで、泣くんじゃない」(プレイしたことなし)とか「すべてのRPGを過去にする」(別の意味で過去にしてしまったらしい)とかの有名キャッチコピーに匹敵、いやそれらを遥かに凌駕する秀逸なキャッチコピー、

 

「最後の一撃は、せつない。」

 

 どうして切ないのか、どのように切ないのか。これは気になって仕方がなかった。

 

 正直このキャッチコピーは狡すぎると思う。誰だってプレイしたくなるだろ。

 

とはいえ一抹の不安はあった。ネタバレを食らわない程度に少し評判を見てみると、「雰囲気(しか特筆するところのない)ゲー」みたいな感想が目立ったし、何より果たして「15年近く前のゲームを果たして楽しめるのか」という疑念もあった。

 だが一方でこんな感情もあった。「どうせ無料(タダ)なら、冒険してみるのも手ではないか」。こんな機会は早々ない。僕は往年の名作ゲームを漸くプレイできる好奇心と期待、そして僅かながらの不安の入り雑じった複雑な感情で、ワンダと巨像をカートに入れた。もう一作は何にしたのかを伸べているとキリがないので、突然だがここで選定作業の描写は中断して肝心のクソゲーレビューに入らせて頂く。そろそろ茶番も飽きてきたので。

 

結論から言わせてもらうと、ワンダと巨像クソゲーでしたね。ええ、もう本当に。

 

まずこのゲーム、プレイヤーに対する「配慮」というものが根本的に欠けている。普通は、どんなポンコツゲームでも「普通」なら、””チュートリアル””というものを差し挟むのではないだろうか。例えば「Lボタンでキャラを脱衣させます」とか、「右スティックでカメラを回すとパンツが見えます」とか、そういうのだ。

 

このゲーム、僕が壊滅的なゲーム音痴だからか、はたまた瞬きの合間に偶然見逃したのか知らないが、操作説明が本当に簡素である。

 

一瞬画面に出たと思ったらソッコー消える。いやまだ読み終わってないんですけど消すなよ。渋々ゲームの説明書を小学低学年ぶりに読むことになった。まぁ、まだこれは許せた。

肝心なのは此処からである。

このゲーム、その名の通り巨像を倒していくのだが、「ぶっつけ本番」なのである。

簡単に言うなら「雑魚敵」という概念が存在しない。広大なフィールド(オープンワールド)を探索しても、スライム一匹たりともいない。いきなりボス戦から。そんなの勝てるわけないだろ……

この概念を理解するのにかなりの時間を要したため、僕はゲーム開始40分近くを誰もいないフィールドを駆けることになった。

……こんなゲーム、前代未聞ではないだろうか(勿論誉めていない)

 

正直に告白すると、僕は一体目の巨像から攻略を見た。巨像には弱点があり、そこを突き刺すことで倒せるのだが、僕は弱点が数ヶ所あることに全く気付かず、「30分近く同じところを突き刺し続ける」というIQ3の行動を取り続けていたためだ。一応言い訳をすると、「巨像の弱点は数ヶ所ある」「巨像の身体をよじ登って(よじ登れることにすら気付かなかった)、弱点を探せ」などの情報は事前に一切開示されない。要するに「察しろ」という訳だ。まあ、「剣の光を当てれば弱点が解る」という注意書きを「弱点は一ヶ所だけ、故に一ヶ所特定すればおK」だと勝手に解釈した僕にも責任の一端があるのかもしれないが……。一体目の時点で確信した。「このゲームに自分は向いていない」

 

……が。このまま引き下がれるだろうか。「16体倒せば終わり」

 明示されたゴールを手放すには、些か早すぎるのではないだろうか。

そして、「試練」が始まった。

 

何でわざわざゲームシステムを解説しなければならないんだという気持ちだが、言うなればこのゲームは「巨像を探す」→「巨像を倒す」、これを16回繰り返すだけのゲームである。

主人公のワンダは剣を持っており、その剣を「翳す」ことで巨像のいる方向が大体解るという仕組みだ(これは結構斬新でよかった)。……が、このシステムが結構くせ者で、全然関係ないところでも違う色に光ることがあるので、変なところに迷い混むともう色々と面倒くさい。次いでに言うなら、迷い混んで探索したところでこのゲームの進行においてメリットはほぼ皆無。何せスライム一匹いないフィールドだ。トカゲと木の実を採集するとステータスが伸びるよーーみたいな要素はあったらしいのだが、僕がその存在に気付いたのは12体目を倒した辺りで(しかも攻略サイトを見た)、結局最後まで利用しなかった。

 そう、このゲームは、星の滅亡そっちのけでスノーボードに嵌まったり、バッジ集めを放り出して地下に潜って一心不乱に化石を掘ったり、嫁が魔族に拉致られて行方不明の間にカジノに嵌まったりといったような、「ゲームにおける寄り道要素」が一切ない。

ゲームはひたすら一本道。比喩でも何でもなく、巨像を倒す順番も完全に固定化されているためだ。仮に次の次に倒す予定の巨像が出現する場所に辿り着いても何も起きない(お陰で如何にもいわくありげな足場がある湖を二十分近く泳ぎ続ける羽目になったこともあった)。残りの巨像の数が半分を割った辺りではたと気付いたが、これは最早「労働」である。「苦行」である。

じゃあ止めろよ。全くもってその通りなのだが、今さら引けない。こんな経験はないだろうか。例えばあと少しで景品を落とせそうなクレーンゲーム。例えば天井まであと少しの限定ガシャ。例えば沢山仕入れた値崩れ寸前の仮想通貨。

それらが共通して含意するのは、そう、「ここまで投資してきたのだから、今さら引けない」という感情だ。これ以上進んでしまえば更なる破滅が待っていると解っていても、人は時にがむしゃらに、しゃにむに自ら破滅への道を突き進んでしまうものなのである。これを行動経済学用語で、「コンコルドの誤謬」という。

 

このゲームの何気に「巧い」ところが(個人の感想です)、連続して難しい巨像は出にくいところだと思う。まさにアメとムチ。ここまで批判しておきながら乗せられて最後までやってしまった自分は、相当のマゾなのかもしれない。

 

このゲームの根幹を成す、肝心のアクション面(というかそれくらいしか構成要素がない)について特筆すべきは「爽快感とは縁遠い」ということ。剣を突き刺す動作の一つ一つにももどかしさを感じるし、巨像の身体へ飛び移るという重要な動作ひとつ取っても少しでもタイミングがずれれば最初からやり直しと、フラストレーションが溜まること請け合いだ。また、基本的に「どうやったら倒す糸口を掴めるか」というパズル要素も戦闘に多分に含まれるため(後半になればなるほどその側面は強くなる気がした)、「方法が解らない限り永遠に終わらない」という縛りもある。一番最悪なのが「攻略方法は解っていてもアクション面の操作が及ばなくて出来ない場合」。この場合はおとなしく試行回数をこなすしかないだろう。同じことを何度も繰り返す。最早拷問の域である。ウルガモスと共にスカイアローブリッジを数百時間チャリで爆走し、数多の理想個体を孵化させた鋼の忍耐力を以てすら、巨像との戦いは艱難辛苦の連続だった。一番時間の掛かった12体目などは、年甲斐もなくコントローラーをぶん投げる寸前だった。このゲームを一度も苛つかずに心から楽しめる人種はよっぽどの奇特か、聖人だけだろう。中学時代にリオレウスの狩りの最中に突っ込んできたドスファンゴに憤怒してPSPの液晶を粉々に砕いた元友人とかには是非プレイさせてみたいところだ。

 

兎に角、本当にストレスが溜まるのだ、このゲームは。最後の巨像を倒したときも感慨や感動なんてものは何一つ浮かび上がらず、ああ、やっと終わったのか。そんな言葉の欠片が漏れでるばかり。

 

さあ、もうすぐこの長くて無意味きわまりない駄文の羅列も終演を迎える。というか、もう流石に疲れてきたので終わりにしたい。何文字くらいあるんだこれ。六千くらいか?

 

ワンダと巨像のラストですが、正直に言ってネタバレする気力も起きない。

というか、本当に脱力した。

自分はオープンエンド()とかメリーバッドエンド()みたいな「取り敢えず受け手に解釈委ねときますね笑」みたいな終わりかたが手抜き感溢れてて本当に嫌なんですが、本作はその最たるものでした……。プレイしてみれば解ると思います……。いや……勧めないけどね。まあ見せ方にも依るけど、本作は最初と最後以外に殆どストーリー性とかはないので(一応先の展開を軽く示唆するような不穏はある)、最後の展開も釈然としないところが多かったですね。うーん、どうなんだろうこのラストは。散々苦労して辿り着いたラストがアレって、プレイヤーに虚無感しか残らない気がするのだが。僕は創作物には少なからず(それがバッドエンドだったとしても)「カタルシス」が必要だと思ってるんですが、ワンダと巨像を十数時間プレイして得られたのは「どうしようもない虚脱感」だけだったので、恐らくは系統が合わなかったんだと思います……。

まあ、多分本当の本当にクソゲーだと思っていたらこんな長文なんて書けないし、最後までプレイできていないと思うので、まあ、こういう作品もありなのかというスタンスで行きたいと思いますね……。でもやっぱりクソ。

 

さっき途切れたもう一つの作品ですが、『detroit:become human』というソフトにしました。ぼちぼちやっていますが、こっちは本当に神ゲー感しかしないので、期待して進めます。

 

あと肝心のキングダムハーツ3ですが、まだ買えてません。単純にお金と時間が少ないし、心の余裕ができた時にでも全作纏めてプレイしたいですね。思い出のゲームなので。

 

この記事は一応ワンダと巨像の記事なので、「これだけ見ると滅茶苦茶面白そうなPV」でも張っとくのでお口直しにどうぞ。

 

 過大評価乙でした……

 

https://youtu.be/adpNcgm1zXk

 

https://youtu.be/Z-dbXaw--F4

 

 

最後にワンダと巨像というゲームの数少ない美点を頑張って三つほど探したので挙げていきたいと思います。

 

 

1.『美麗なグラフィック』 

これだけは看板に偽りなしだった。スクリーンショットを取っているときが恐らく一番楽しかった気がする。「風景を眺めるゲーム」と言っても過言ではない。木漏れ日、水飛沫の表現は本当に美しかった。

 

2.『巨像の圧倒的な迫力』

これは正直に言って想像以上だった。「巨大な敵に立ち向かう一人の人間」という主題は滾るものがある。

「いや……こんなん絶対勝てないだろ……」という絶望感も凄まじいものがあるのだが。進撃の巨人とか好きな人なら結構気に入るんじゃないかな。


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3.『ワンダと巨像を主題にこの駄文を書くことで相対的に最近疎かになっていた小説創作のモチベーションが取り戻せた』

 

以上です。

 

 

 

 

もし、こんな記事を読んで逆にプレイしてみたいという人がいたら、愚かなる先達としてアドバイスを一言。

 

「困ったら取り敢えず弓」

 

 

 

 

 

【読んで】手慰みに執筆していたネット小説がKADOKAWA主催のコンテストで部門別週間ランキングBest10に入ってしまった件【ください】

 信じられない、というのが第一の感想である。

 

https://kakuyomu.jp/contests/kakuyomu_web_novel_004


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まあ、記事の内容としては人気のイキリ長文タイトルラノベ風のブログタイトルに見ての通りなのだが、折角ブログをやっているのだからここでも作品の宣伝をしていきます。させてください。

 

カクヨムコン4 SF・現代ファンタジー部門 第10位!

雪本つぐみ『Desire/Disaster』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885814119

 

折角なので同人書籍を作った際に裏表紙に記載したあらすじを載せます。

 

幼い頃事故によって家族を亡くし、孤独な生活を送っていた三神麻里亜は、自らを悪魔と名乗る青年と運命的な出逢いを果たす。
「君はかなり恵まれているよ。何せ、僕と契約すればどんな願いでも叶えられるのだからね」
 悪魔はそう言って麻里亜に契約を促すが、叶えるべき願いを持たない彼女は躊躇する。

 彼との生活の中で、心を鎖しがちだった麻里亜は次第に変わっていく。やがて悪魔の口から語られるのは、この世界がもうすぐ滅ぶという事実と、次代の神となる人間を選定するべく行われるゲームの存在。十二人の『悪魔憑き』の一人に選ばれ、戦いに身を投じることになった麻里亜が辿る、数奇な運命とは――――。

 

どうでしょうか、読みたくなったでしょうか? 個人的に思い入れのある作品なので、出来たら読んでみてください。因みに本作を執筆しようとした動機は今まさに絶賛上映中のFate/stay nightの桜√をプレイしたことに因ります。HFは本当に神。まあ、まだ映画観てないんですけどね。特に九日目の公園のシーン。FGOで毎日種火集めしてる人は是非その時間でsnをプレイしましょう。

 

それはさておき、拙作にはFate空の境界を初めとした所謂””新伝綺””と呼ばれるジャンル、及びその新伝綺に多くの影響を与えた””新本格ミステリ””の作風(ex.活字だからこそ活きる仕掛け、衒学知識の頻繁な引用、現実舞台でアニメ・漫画的な登場人物たちを描く)が色濃く反映されていると思われます。(割りと適当言ってます、ただ単に僕がそのジャンルを好きだというだけです) なので、そういったジャンルが好きな方にはクリーンヒットするかと。

 

まあ、幾分か幅の利いたことを言わせてもらうと、「これだけの結果を出したのだから面白いに違いない。読んでください」

言いたいことはこれに尽きます。読んでください。お願いします。webコンテンツは宣伝が命。

 

最後に、僕がこの小説を連載しているサイトについて日頃の感謝として軽く宣伝を行いたいと思います。

 

カクヨムというWEB小説サイトは他のサイトとは異なり大手が運営しているからか、読者へのサービスがかなり充実していると思います。投稿フォームの見易さ、コマンドの使い勝手といった投稿者サイドの利便性だけでなく、読者側のサービスもです。アマチュアの作品が無料で読めるのは勿論のこと、プロの方の作品もいくつか無料で公式で読めます。これは読書家にとって革命に等しいので、是非に登録しましょう。少なくとも登録して損はないです。

 

あと、以前も書いたんですが同人活動も継続中です。夏コミ目指して頑張ります。

 

それでは拙作の宣伝でした。まあ、ずっと前からいつこっちで宣伝しようか迷っていたのですが、ランキング上位に躍り出て最大の効用を産めそうな今だからこそ宣伝しました。最後にもう一回いいですか。

 

読んでください、お願いします。

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885814119

 

 

 

 

 

 

 

【事前告知】コミティア126にサークル参加します【春日夢想】

簡単な告知記事です。今週末の11/25の日曜日に東京ビッグサイトで開催されるコミティア126にサークル参加します。

 

スペースNo.はZ62b、サークル名は春日夢想。 

 

新刊は二冊で、一冊は異能バトルものの同人小説、もう一冊は詩や評論、あとは前ブログに乗せた小説『彼岸少女』等を収録した雑文集になります。↓おしながきです。

 

 

 

 そしてこちらは小説の表紙イラスト。

表紙も内容も、商業誌に引けも劣らぬと勝手に自負しています。よかったらお手に取ってみてください。

 

 参加できるのが今からとても楽しみです。初めてのサークル参加、至らぬところもあるとは思いますが、精一杯頑張るのでよろしくお願いします。以上、告知でした。

 

俄かオタクが選ぶ、観て衝撃を受けたアニメbest10


最近、””とあるアニメ””のboxを購入した。何となく、今まで観たアニメのなかで個人的に印象に残った作品について語りたくなったので、ブログにして残さんとする。

 


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というわけでタイトルにある通り、僕が「観て衝撃を受けた」アニメを紹介していきます。なお、ここで用いられる””衝撃””とは、良い意味の衝撃でもあり悪い意味での衝撃でもある。性根がひねくれてるので、面白かったアニメbestにはしたくなかったんですよ。ただそれだけ。場合によっては軽いネタバレを含むところがあるので注意。なお、本記事で紹介する作品はひとつを除いて全て有名作品なので、観ている人も多いかもしれない。俄オタクなのでね、仕方ない。それでは、行きますよーー。

 

 

10位 Angel Beats!


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10話以降の展開。いや、主役級とユイさん以外の人たちの扱いがあまりに酷すぎませんか? いつの間にかいなくなってた。尺がなんとかならなかったものか。楽曲は神。

 

9位 がっこうぐらし!


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「どこが衝撃か」は言うまでもないだろう。第一話は一種の映像版叙述トリックが用いられている。原作でもこれは健在だが、アニメは「見せ方」が巧かった。前情報なしで観たので、文字通り度肝を抜かされた。 

 

8位 ご注文はうさぎですか?


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ある意味すごい。可愛い女の子が、可愛く動いているだけのアニメ。嫌みっぽく見えるかもしれないが、一応誉めている。精神をめちゃくちゃ病んでいた時期に観たせいか、とても面白かった記憶がある。因みに内容は全くと言うほど覚えていない。ニコニコのコメント大喜利が珍しく面白かった印象がある。(ex.美少女回転寿司、岩倉使節団)

 

7位 さよならの朝に約束の花をかざろう

これは以前記事で言及したので略。まさか自分がアニメで泣くとは思わなかった。本当に言葉で言い表すのが勿体無いほどの物語。

http://alright3.hatenablog.com/entry/2018/04/07/235754

 

 

6位 新世紀エヴァンゲリオン


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テレビシリーズを観て、「いや、これで終わり!?」 とマジで叫んだ。なんだよおめでとうって。ぜんぜんおめでたくねえよ。信者から絶賛されている(?)あの最終回は、正直「手抜き」にしか見えなかった(実際の台本を使ってるのは結構いいかなあと思ったが)。まあ映画で補完されたからいいけども、それにしても視聴者おいてけぼり過ぎる。因みにエヴァ貞本義行先生の漫画版が一番好き。絵もラストの終わりかたも綺麗。

 

5位 THE IDOLM@STER

これもさよ朝と同じく以前に記事で言及したので略。リアルタイムで観た数少ないアニメ。これだけストレスなく観れるアニメも珍しいと思う。一話一話、丁寧に作り込まれているというか、スタッフの愛を感じた。

まあ語り尽くせないほど素晴らしい作品なので是非観てください。

http://alright3.hatenablog.com/entry/2017/12/23/182735

 

 

4位 Fate/Zero


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何に一番衝撃を受けたかと言うと、鬱展開でも映像美でもなく、

 

圧倒的な原作再現度。

 

というのも、僕は本作はアニメを見る前に原作を読了済みだったので、ライダーの宝具開帳シーンでも、ランサー陣営の最期でも、切嗣の過去編でも、snと比較すると吃驚のセイバーのポンコツぶりにも特に衝撃は受けなかったのである。勿論、原作では衝撃を受けたが。一度内容を知っている以上、アニメにはあまり期待していなかった。……が。

 

原作を忠実に、いや原作では補完できなかったところまでをも再現しているアニメを観て夢中になった。テンポが良すぎて滝のように見れる。アニメから入ればよかった、と少し後悔するほどに、「映像化」が巧みだったと思う。ラストバトルなんて原作の重厚すぎる文章に肉薄するとも劣らない。

 

3位 コードギアス


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息もつかせぬストーリー展開、魅力的なキャラクターと舞台設定、厨二拗らせすぎて一周回ってかっこいい主人公など、見所を上げればキリがないが、やはり第一期終盤の激動の展開は唯一無二だろう。「日本人の皆さん、死んでくれませんか?」はヤバい。本作の一番の魅力は主人公のルルーシュとの苦悩にあるのではないかと感じた(そして贖いきれないその苦悩を見事に昇華、解放させたラストは白眉だろう)。物語が進むにつれ複雑に絡み合う登場人物たちの意図や信念と、連鎖反応のように次々に巻き起こるドラマに目が放せない。「先の読めない展開」というと陳腐になってしまうから、「先を知りたくて仕方ない展開」とでも言っておこうか。とにかくそのストーリー進行の巧みさに於いては他の追随を許さない傑作であることは間違いない。新作映画楽しみ。……正直なところを言うと、ラストが綺麗な分、蛇足になる可能性も懸念していないと言ったら嘘になってしまうが。

 

2位 魔法少女まどか☆マギカ


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オタクになったきっかけのアニメ。「魔法少女もののアンチテーゼ」という謳い文句を伴って語られることが多いように思われる本作だが、筆者はそうは思わない。寧ろ、「王道を極めすぎたが故の」この展開なのではないか。絶望が深いほど、ラストの希望が輝くものなのである。この物語が絶望絶望言われているのは割と納得がいっていない。本作が「希望」を描く作品であることは、最終回を見れば一目瞭然だろう。巴マミの台詞「あなたは希望を叶えるんじゃない、あなた自身が希望になるのよ。わたしたち全員の、希望に」という台詞が狂おしいほど好き。この台詞に本作のメインテーマが凝縮されているといっても過言ではないと思う。そう、本作は「希望」を描いた作品なのである。といっても人によってはラストの終わり方にあまり希望を持てない人もいるかもしれない。主人公のまどかの自己犠牲、ただの人身御供のように感じられるのかもしれない。ただ、こういった「人によって解釈の別れる展開」というものこそ、物語をより魅力的に見せるのではと思っている。本作に希望を見出だした筆者だが、叛逆の物語では割りと絶望した。逆に、叛逆で希望を見出だした人もいるかもしれない。あなたはどう感じただろうか。人と感想を共有したくなるアニメの筆頭だと思う。

 

1位 エルフェンリート


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この作品を紹介したいがためにこの記事を書いた。過言でもなんでもなく、本当にそのままの意味である。

 

最初に言っておこう。なんとこのアニメ、

 

OPでヒロインのおっぱいが拝める。

 

もう一度言おう。

 

「OPでヒロインのおっぱいが拝める」のだこのアニメは。

 

……マジで。というかヒロイン全裸。もうこの時点で神アニメ。

 

なんか話題が低俗になりそうだが、裸といってもあれである。オタクたちが戯れに自慰の種にするような下劣な裸ではなく、””綺麗””な裸である。例えるならそう、裸婦画に近い。完成された芸術に抱くのは劣情ではなく憧憬。ああ、美少女になりたい。

 

話題が逸れた。このアニメ、OPのオサレ度においては頭二つほど抜けているのは間違いない。おっぱいは見えるが、紛れもなく神OPである。歌詞はドイツ語、グスタフ=クリムトの絵画を模した独特の映像。聖書を引用した箇所があるからか、何と海外の聖歌隊で歌われたとかなんとか。とにかく聞けばわかる。僕はまず最初にOPで目が釘付けになった。これは間違いなく神アニメだろう、と。

 

だが一抹の不安もあった。これ、雰囲気だけでは? 本編は美少女がイチャコラしてるだけの中身すっからかんアニメである可能性も危惧していた。そう、まだこの時点では。

 

断言しよう。

 

第一話を見た瞬間から、あなたはこの作品をずっと忘れられなくなる、と。

 

ここで簡単にあらすじを説明しておこう。物語は絶海の孤島に聳える研究所から始まる。そこではディクロニウスなる頭に角が生えた突然変異体の少女を収監し、非人道的な実験を行っていた。ある日その研究所から一人のディクロニウスが脱走する。ルーシーと名付けられた少女は脱走時の負傷で記憶を亡くしたまま、鎌倉の由比ヶ浜に漂着する。そして彼女はある男子大学生と出逢い、奇妙な同居生活を営むことになるのだが――。

 

一応言っておこう。このアニメ、残虐表現が非常に過多なので、心の弱い人は視聴をお薦めしない。とにかく酷いのである。ひぐらしなんて目じゃない。とにかく死ぬ。血や臓物を撒き散らしてなんてレベルじゃない。首は飛ぶ。手足は千切れる。女の子は泣き叫ぶ。本当にそれこそ、老若男女問わずギャグみたいに人が死ぬ。

 

といっても、死を軽く扱った陳腐な作品では決してないということは声を大にして言っておく。本作は「命の意味とはなにか」、「他者と”違う”とはどういうことか」といった深遠な哲学的テーマに裏打ちされた、奥行きの深い物語なのである。

 

なんか言ってることが矛盾しているように見えるかもしれない。だが、エルフェンリートはそんな「一見すると非常に危ういバランス」で成り立っているように見える。ジャンル分けも曖昧で、SF、ラブコメ、バトル、サスペンス等とエンタメ作品のジャンルを多彩に取り込んでいるのだ。その””ごった煮””感が堪らないというか、かなりカオスな作風であることは間違いない。他に類を見ないもの。

 

さて、遅くなったが自分が本作のどこに衝撃を受けたのか。

 

 

全て、である。

 

 

とにかく凄い。脚本や構成の巧みさ、キャラクターの苦悩や葛藤、声優さんの演技、当時のものとは到底思えないハイクオリティな音楽と映像、予想を遥かに越えた衝撃の展開、神秘的なOP、可愛らしいED、放送倫理のギリギリを責めた過剰なまでのグロ表現、そしてほんのりとしたエロス、一度観たら決して忘れられない衝撃の第一話、味わい深い余韻を残す最終話。それこそ挙げればきりがない。

 

言うなれば作品全てが魅力である。文字通り圧巻の出来だった。物語に吸い込まれたというか、夢中で観た記憶がある。こんなに面白かったアニメは他にない。

 

一応原作は漫画だが、こちらはアニメに比べるとややシリアス成分に欠け、その分女の子たちの可愛さが強調されている。因みにアニメと漫画は終わりかたが違う。どちらが優れているというつもりは毛頭なく、どちらも面白いのでお薦め。アニメは漫画(全12巻)の途中、大体7巻くらいまでの内容となっている。何気に凄いのが、連載途中なのにここまでハイクオリティな内容に昇華させていること。アニメ版の””解釈””の仕方がすごかった。色々言うとネタバレになりそうだが、アニメ版ラストを観てから原作ラストを読めば、その凄さが身に染みてわかるはずだ。

 

最終回まで観れば、きっとあなたも僕と同じくこの作品の虜になること間違いない。知名度が低いせいか、はたまた古い作品だからなのか、残念ながら2018年現在、定額アニメサービスなどにも殆ど姿を見せていない。TSUTAYAで借りるなり、boxを買うなりして是非見てみて欲しい。きっと忘れられない作品になるはずだ。

 

それでは、「観て衝撃を受けたアニメbest10」でした。結構書いてて楽しかったです。エルフェンリートはいいぞ。またアニメ紹介記事は書きたいですね。続けてコミティアの事前告知記事を書いていきます。

 

 

 

中編小説 『彼岸少女』

 

 

  0

 

  いや、確かにサワタリは変な奴だったよ。一応は女であるあたしを自分の部屋に初めて上げて開口一番、「実は僕、幽霊が見えるんだ」なんて抜かすもんだから、あたしは心底おかしくて笑い転げてしまったんだった。

「奇遇だな、あたしもだよ」

あたしはそう返して目を伏せた。少しだけ涙が出た。今から思えば、あの時あんなに笑ったのは安心したからなのかもしれない。

 

 1 

 

あたしとサワタリがドアを開けると、朝の学校の澄み切った空気が音を立てて濁った。いつだったかの化学の実験で見た試験管みたく、透明な教室水溶液がどす黒く変色した。

はあ、ふざけんなよ。

教室の中の十九対の目が一斉にあたしたちの方に向く。三か月前までは親友だったはずのユッコなんかはもう傑作で、若くして最愛の夫を亡くした未亡人顔負けの表情で口許を抑えて気まずそうに目を伏しやがった。あたしたちを見世物にしてる暇あったら学生生活を謳歌している自分を少しでも演出しとけ、と啖呵を切る度胸はあたしにはなく、いつも通りに大人しく席に着いた。サワタリもあたしの前の席に着く。そして申し訳なさそうにあたしの方を見る。

 

ああ、こうなったのも全部、あんたのせいだ。

 

現代の学校での最も効果的ないじめの方法は何かと問われたら、あたしは迷わず「無視」と答える。無視、シカト。相手の存在の完全否定。今まさにあたしたちがクラスメート全員から喰らっているそれは、思春期の多感な少年少女の心を修復不可能なレベルで破壊する恐ろしい代物だ。誰も話しかけてくれないどころか、クラス全員がまるであたしたちなど存在しないかのように意を介さず振る舞う様は最早一種の総合芸術ですらある。なんだよ、この団結力を五月の体育祭で発揮してりゃ二組なんて敵じゃ無かったろうに。変なところで協調すんじゃねーよ。なお酷いのは、このいじめに担任まで加担してるってことだ。授業中にもあたしとサワタリだけは絶対指名されないし、あたしにいたってはそもそも17番、

篠田(しのだ)(みね)。って番号と名前すら呼ばれねえ。もともと授業に顔を出さない不良生徒だったとはいえ、流石にこれは度を越している。一体どうなってる日本の教育機関は。    

 

誰とも話さない、誰からも相手にされない学校生活も慣れれば気楽なものだ。なにせ昼休みに立ち入り禁止の屋上にいても誰にも文句を言われない。あたしは風を吹かしながら、フェンスによって細切れにされたグラウンドを眺めた。

灰色の地面に引かれた白線が眩しい。思えばもう陸上部にも顔を出さなくなって久しいな、部の皆はどうしているだろうか。そんなことを考えていると、

「篠田さん」

サワタリだった。ビビった、本当にビビった。音もなく現れるとか勘弁してくれ幽霊かよ、もはや恐怖でしかない。

「驚かすんじゃねえよ。フェンスがもう少し低かったらお陀仏だったからな」

サワタリは少し気まずそうに俯いて、

「ごめん……。篠田さんには怒られてばっかだね。あの時も……」

そうやってサワタリはまた申し訳なさそうに笑う。ああ、この笑い方がなによりムカつく。こうやって笑いかけられるとつい可笑しくなって、大抵のことなら押し流せるような気がしてしまうのが何よりムカつく。サワタリはいつものようにあたしに購買のパンを差し出す。

「……おう、毎度ありがとな」

「篠田さんは命の恩人だからね、このくらい安いものだよ」

あたしがサワタリの命を救ったと言えば語弊がある。が、一応説明は必要だろう。なんで一応は不良であるあたしがこんな冴えないいじめられっ子と関わるようになったかと言えば、元はと言えばサワタリが本を読みながら通学路をふらふら歩いてたのが悪い。省略し過ぎた。まあ要するに読書に没頭するこいつが車に轢かれそうになったところを柄にもなく身を挺して助けてしまったことが運の尽きだった。あたしに助けられたとき、こいつは失礼極まりないことに礼も言わず逃げ出しやがったが、後日あたしが学校で話しかけると怯えるように礼を言った。それ以来こいつは恩返しと言ってあたしに昼飯を毎度奢ってくれるようになった。そしていじめられっ子と会話したばっかりに、あたしまで一緒にいじめの対象になったとさ。全くいい迷惑だぜ。正直ショックがでかすぎて、そこら辺の一週間くらい記憶が曖昧だ。

「お前は普段学校で何してんだ」

「図書室でずっと本読んでる」

「あたしと違ってお勉強できんだから、ちゃんと授業出ろよ」

「別にいいんだ。本を読んでる方が楽しいから」

と、屋上の扉が不意に開いて、

「おい、そこで何を話してる!」

やべっ。生活指導部に見つかった。普段は絶対見つかんないんだけどな。全く間が悪いぜ。

あたしとサワタリは説教に対し生返事を返しながら、すごすごと屋上をあとにした。

屋上から吹き込む乾いた秋の空気が、やけに肺に染みた。

 

 午前だけでも怠いのに午後の授業なんて出るわけもなく、今日はどこで暇を潰そうかと階段を下っていると、以前あたしが所属していたグループが下からやってきた。気まずくて思わず目を逸らす。昨日見たテレビがどうだとかクラスの誰々がかっこいいとか志望大学はどこにするかとか、そんなくだらねーことを話して恰も自分も輪に入ってるふりをしてた昔が懐かしい。今では輪に入るどころか、自分から人に話しかけるのすら億劫になってしまった。

ふとグループの中でユッコだけがあまり喋ってないことに気付いた。どこか上の空で、相槌すら疎かになっている。顔を上げると、目が合った気がした。話しかけてくれねーかな、なんて淡い期待は砕け散り、あたしはまた踊り場に一人取り残された。

はあ、そんなに、人間関係ごっこが大事かね。

 

あたしは昔から集団というものがニガテだった。たとえば街中の人混みなんかは最悪だ。ひとつの生き物のようにうねりながら行進する人間たちを見てるとたまらなく不安になる。雑踏の中あたしは考えることがある。お前ら本当はもう人間じゃないんじゃないの、人形かロボットにでもなっちまったんじゃないの。でなきゃ見ててここまで気持ち悪くなんねえよ。

女子にお決まりの群れ作りの風習なんかも、面従腹背のスタンス。針に糸を通すようなバランスで構築された人間関係は、やがてグループの外でも中でも、個々のつながりを否応にも浮き彫りにしていく。誰々は誰々が嫌いだから誰々の前では何々を言っちゃいけなくて、でもそいつがいないとこなら言ってよくてとか、あいつがあいつに惚れた腫れたとか、あいつとあいつがやったやってないとか、そういうのを見たり聞いたりすると眩暈がしてくる。なんというか疲れてしまう。皆があたしの知らないどこか遠くへ行ってしまったようで、独りでいる時よりも寧ろこっちの方が孤独を感じさえする。ゴシップ感覚や野次馬根性でそんな話題を嗅ぎまわってる連中の気が知れねえ。

この世はあたしが今見ている空っぽの廊下以外は巨大なブラックボックスで、その中ではあたしが知りえないことが沢山起こってて、自分の世界が果たして本物なのかみたいな根本的な疑念まで巻き起こってきて、堪らなく不安になる。自分の存在に確証が持てなくなってきて、無性に誰かと話したくなる。

おかしな話だ。人間関係が苦手とか言いつつ、一人になったらさびしくなるんだから。

 

 何となく図書館の前を通ると、サワタリがなにやら難しそうな本を読んでんのがガラス越しに見えた。何を読んでんのか気になったので、入学式のオリエンテーション以来に図書館に足を踏み入れてみる。久し振りに本の匂いを嗅いで、鼻の奥がつんとなった。

「誰の本読んでんの」

ラッセル」

サワタリは本から目を離さず言った。失礼な奴め。

「誰それ?」

「世界五分前仮説を提唱した人」 

「世界五分前仮説を知らねえ」

するとサワタリはあたしに向き直り、

「簡単に言うとね、世界は五分前に創られたかもしれないって思考実験だよ」

「はあ? なにそれ」

第一全然簡単じゃない。あたしには全く訳が解んない。そんなあたしを見かねたのか、サワタリ先生の倫理だか哲学だかの講義が始まった。正直よくわからなかったが、要するに「世界が五分前に創られたかもしれない」という説に対する有力な反証はないから、本当にそうかもしれないよね、怖っ。みたいな話だった。なんだよ、この世界が本物かどうかとか、あたしがさっき思ってたことと大差ないじゃん。それは流石に思い上がり。でも、自分の見てる世界が少し広がったような気がして、少しこそばゆくなる。

「いつもこんな小難しい本読んでんのか」

「ううん、いつもはこれ」

 そう言ってサワタリはアニメ絵が表紙のうすっぺらな本を数冊取り出し、図書館の殺風景な机に満足げに並べ始めた。表紙には幼い顔に不釣り合いな乳をぶら下げた、頭のよろしくなさそうなアニメ女がこちらに向けて媚びた視線を送っていた。キモっ。と思わず声に出しそうになったがそこは大人の配慮、あたしは「可愛い絵だな」と言った。するとサワタリ、「流石篠田さんは解ってる」とか何とか言って、水を得た魚のようにその『魔法少女ゆりか♡るりか』なる作品の魅力を語り始めた。ああ、失敗した。

 

放課後、することもなく行く場所もなく校庭で立ち往生していると、校門のところでサワタリがあたしを待っているのが見えた。嫌な予感がする。

結局あたしはサワタリ邸でゆりか♡るりか上映会に参加させられることになった。まあどうせ暇だしいいか。サワタリ母はあたしが家に上がり込んでもいつものように何も言わず(これはこれで問題だろ)、言葉を交わし二階へ消えていくあたしたちを黙って不安そうに見つめてくるだけだった。

幾度目かの訪問でも、まだ慣れない。壁を鱗のように覆うアニメのポスター、折り重なって山脈を築いている本の山、肌色からこころなしかピンクが見え隠れする、墓碑かよってくらいに大きなゲーム(?)の箱。サワタリはずかずかと床を掻き分けながらテレビの前に辿り着き、再生機を起動させた。暗い部屋を青白いテレビの光が照らす。あたしはどことなく不安になって、

「そういえばお前、最近は「幽霊を見た」って言わなくなったな」

 サワタリは目を伏して、

「だって誰も信じてくれないから」

「まあ、それはそうだろうな。あたしでも人には言わねーよ」

「……この話はやめよう。ほら始まったよ、篠田さん」

 うまいこと躱されたなとか思いつつ、あたしはテレビに目を向けた。

サワタリがいじめられている、というかクラスで浮いているのは新学期早々「僕は幽霊が見える」とか触れ回ったからだ。頭おかしいんじゃないの、みたくグループから遠巻きに見てたあたしが言うのもなんだけど、とにかく関わりたくない奴だった。そう思っていたあたしがまさかこうやって奴の家でアニメを鑑賞することになるとはな。アニメなんて小学生以来だ。画面の中ではゆりかちゃんが謎の敵と激闘を繰り広げていた。頑張れ、頑張れとあたしが心の中で応援していると、なんと魔法少女ゆりか、一話にして敵に身体を股から真っ二つに裂かれて死んでしまった。泣き叫ぶ幼い妹のるりか。おいおいそりゃねーだろ、夢も希望もないな。いや、それはあたしの人生か。

ゆりか♡るりかは絵柄にしてはハードな内容だった。途中何度も差し挟まれる多元宇宙だの水槽の脳だのの衒学知識にあたしは辟易してきた。なるほど、サワタリはこういうところから要らん知識を集めてくるのね。最後のオチは、なんと最初に死んだはずのゆりかちゃんが黒幕でした、みたいな感じであたしはぐったりした。死んだのになんで生きてんだよ。幽霊か、お前。

そんなあたしの心中を斟酌することなく、サワタリは一気にアニメの解説を始めやがった。このシーンは実はこんな意味があってとか、この演出は凄いスタジオがやっててとか、そんなの知らねえよ。物語なんて最後のオチで八割方の出来が決まるもんなんじゃねえの。空気の読めないサワタリはあろうことか原作まで読ませようとしてきたので少しイラっと来てあたしは思わず、

「あのなお前、こんなのばっかり観てるからいじめられるんだぞ」

 サワタリは暫し鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたが、いつものように申し訳なさそうに笑っていた。

「ごめん」

咄嗟に謝った。しまった。またやってしまった。気まずい空気が流れる。

「あのな、あたしが言いたかったのはもっと生身の人間と関わったら? ってこと。ゆりかちゃんはお前を好きにはなってくれないんだぜ?」

 また余計なことを言ってしまった。あんたはいつも言わなくてもいいことを言って空気を凍らせる。とかユッコに言われたなあ確か。

「あたし、今日は帰るわ」

 そう言って、あたしは逃げるようにサワタリ邸をあとにした。 

 

 夜道をひとり歩いていると、後ろから車に轢かれそうになった。あぶねえ。本当に危なかった。あと一歩踏み間違えてたら昇天してた。丁度サワタリを助けた時もこんな感じだった。時間が無限に引き延ばされて、空間から色がなくなって。急停止する車のブレーキ音と冷たくて固い地面だけを、あたしは感じていたんだ。

 ふと交差点の角を見ると献花があった。あたしは具合が悪くなる。いつもあたしたちが通っていた通学路で、こんな簡単に、こんなあっけなく人は死んじまうもんなのか。

 

 家の灯りが見えてくる。といっても全く安心できない。あたしにとって家ってのはただの喰って寝る場所じゃない。劇場だ。観客は家族全員。そいつらの前で演技するあたし。演目は家族ごっこ

「おかえり、みーちゃん」

 鍵のかかってない玄関を開けると、猫なで声の母親にお出迎えされた。風が強く吹き込むので、玄関を閉める。

 あたしはすぐに自分の部屋へと向かう。サワタリの秘密基地と違ってベッドと机しかない殺風景な部屋。

「みーちゃん、いるんでしょう? 部屋に入ってもいい?」

 母親が扉をノックしてきた。苛ついたので蹴り返す。階下で弟の「もうやめろよ」という声が聞こえた。

「みーちゃん、あんなことになっても、ママは大丈夫だからね。みーちゃんさえ生きてれば、それでいいんだから」

「気持ち悪い。誰のせいでこうなったと思ってんだよ」

 あたしは吐き捨てるように言った。

うちの母親は、ちょっと普通じゃない。あたしは中学生まで、「遊んだ」記憶がほとんどない。ずっと勉強させられてきた。サワタリみたくおつむの出来も良くないのにも関わらず、だ。おかげで高校は良いところに入れたが、そこであたしを待っていたのは栄光ではなく挫折。周りが優秀過ぎてちっとも授業についていけない。これまでろくに遊んでこなかったせいで全く人と話を合わせられない。小学校からずっと一緒のユッコがいなかったら、本当に孤立していたかもしれない。母親はそれでいてあたしのことを天才児扱いして理想を押し付けるもんだから、あたしは余計に勉強のやる気を失った。それであたしは不良になることを決めた。こうなったらもう、勉強してやらない。解ったんだ、どんなに努力しても辿り着けない領域があるんだってことをさ。

 

高二のときから、あまり学校へ行かなくなった。髪も黒から染めて、金に。これがあたしに出来た、細やかな叛逆。母親はあたしの豹変ぶりに慄き、精神を病んだ。おかげで今もクリニック通いだ。最近は幻覚まで見えてるらしいんだから、流石に救えない。

 あたしは薄暗い部屋の中で蹲って眠った。なんなのだろう、もう勉強はしないと決めたし、大学にも行かないと決めた。人生を楽しまないとまで決めたと言うのに、この十七歳の高校三年生の心に蟠る捉えどころのない虚無感は一体なんなのだろう。堪らなく虚しい。まだ若いんだから無限の可能性があるなんて言葉で騙されるほどあたしは馬鹿じゃない。まだ十七じゃない、もう十七なんだ。学校にも全然行かず、家族ともまともに話さない。ただただカレンダーの日付を追うだけの単純作業をあと七十年近く。あたしの人生は、これからどうなるんだろう。

 

 目を醒ましたら日付が二日動いていた。おいおい嘘だろ、そんなに寝ちまったのか。曜日の感覚すら怪しくなってきたな。体がどことなく重い。一昨日のサワタリの家でのことを思い出して、学校に行く足は自然と遠のいた。あたしは街の図書館で時間を潰すことにした。たまには本を読むのも悪かねえ。

 

 学校が終わったのか、ぞろぞろと列をなして図書館の前をあたしたちの学校の生徒が通っていく。その中に意外な組み合わせを見つけて、あたしは思わず声を出しそうになった。

サワタリとユッコだった。おいおいお前らいつの間にそんな関係に、とあたしが声を掛ける前に、二人は図書館の前のベンチに並んで座った。ユッコがなにか神妙な顔で話している。なんだ、告白か? あたしは柱の陰に隠れるように、二人の様子を覗き見た。

 

「レイに悪いと思わないの? あんたのせいでレイはあんなことになっちゃったんだよ?」

 全くだ。まさか不良であるあたしがクラスの連中から総スカンを食らうことになるとはな。ユッコが責めるようにサワタリを見ている。因みにレイというのはあたしの渾名だ。(みね)って名前はなんか年寄り臭くて好きじゃなかったので、山嶺(さんれい)の嶺から取られたこの渾名をあたしは気に入っていた。

「思ってるよ……」

「ううん、絶対悪いって思ってない。じゃなきゃあんなに無神経なこと出来ないもん。なんで今日、「篠田さんが休んでる」なんて言ったの?」

 まあまあそんなことで責めないでやれ。そいつも中身は悪い奴じゃない。無神経なのは同意だが。

と、不意にサワタリと目が合った。ユッコは気付かず喋り続ける。

「だからもう、あんなことは止めて。もうこの件はあたしたちの中では決着がついたことなの」

 あんな陰湿ないじめを「この件」なんて随分な言い草だな、お前にまで無視されてるのは割と傷ついてるんだが。

 ユッコは泣き始めた。

「あたしだって、本当はレイとまた話したいよ……」

 じゃあ今すぐ話させてやる。あたしは柱の陰から躍り出てユッコに声を掛けた。素通りだった。いつもと同じように。なんだよ、皆がいない場所でも駄目なのかよ。

 

 サワタリはあたしに気付いてもぼーっとしていた。

「おい」

ふらふらと歩きだしたサワタリ。何処へ行くのかと思えば、迷子になった女の子をひとり連れてきたと言う。

「そっか。どこなんだ、その子の家」

あたしはサワタリと一緒にその女の子を家に帰すことにした。迷子の幽霊をサワタリと一緒に送り届けるのは初めてじゃなかったから、もう慣れたものだった。

「お兄ちゃんたち、ありがとう」

家まで送り届けると、女の子はそう言って成仏したらしい。

 

「そうか、良かったな」

「未練を残して死んだタイプの幽霊は、その願いを叶えてあげれば成仏するから」

 サワタリは俯いてから、続けた。

「篠田さん、今度大事な話があるんだ」

サワタリは神妙な面持ちでそう告げた。

「なんだ? 言っとくけど告白なら受けねえからな」

「違うんだ、もっと大事なこと」

「はあ?」

 高校生のあたしたちに、恋愛と勉強以上に大事なことって何があんのかね。両方できてないあたしが言うのもなんだけども。

 

 夜。家に帰ると母親がリビングでひとり咽び泣いていた。リビングの椅子は一つなくなっていた。

「みーちゃんもねえ、可哀想にねえ……。学校にも行けなくなっちゃって。昔はあんなに元気だったのにねえ」

 キモい。大体ウザいよ、てめえが娘に自分の理想を押し付けたせいで、それに耐えかねて今あたしはこんなことになってるの、解ってんのか。そんなことを思うと何故だか涙が溢れてきた。母親はあたしのことを嫌っていたわけじゃない。憎んでいたわけじゃない。我が子のためになると思って、バカ高い私立にも入れてくれたんだ。なのになんで、こんなことになってしまったんだろう。独りきりの部屋の中で毛布にくるまりながら、あたしは泣いた。  

 

 朝日が気怠い。あたしは重い身体に鞭打ち、学校へ向かった。ここ最近、おかしい。自分の身体が自分のモノじゃないかのように動きが鈍いし、たびたび記憶が飛んでたりする。若年性なんとかって病気か? あたしはたまらなく不安になった。

 

 朝の教室では、ひと悶着起きていた。騒ぎの真ん中にいるのはサワタリだった。おいおい、またなんかやらかしたのかよ。

 

 いじめっ子のアカネがサワタリのノートを取り上げて、何やら喚いていた。

「あんたね、いい加減にしろよ。不謹慎にも程があんだよ」

「返してください」

 サワタリは泣きそうになりながら懇願していた。

「沢渡くん、もういいの。あなたのせいだなんて、皆もう思ってないよ。だから、お願いだからもうやめてよ」

 大人しいユッコまで声を荒げていた。

 あたしは教室の中に踏み込み、サワタリたちが言い争っている場へ赴いた。

「篠田さん、来ちゃだめだ」

 サワタリが驚いたようにあたしの方を見る。

その時、アカネがキレた。あろうことか、サワタリのノートをゆりかを殺した生物みたいに真っ二つに裂いた。サワタリが呻く。

我慢の限界だった。あたしはアカネの肩を掴んで、

「おい、流石にそれはやり過ぎだろ」

 ガン無視だった。アカネはあたしのことなど見えてないかのようにサワタリに向き直り、吐き捨てた。

「これで目が醒めただろ」

 ノートの残骸が床に散らばった。慌てて拾い集めるサワタリ。彼の背中が、堪らなく寂しげに見えた。泣きそうになりながら教室を飛び出すサワタリを追って、あたしも出る。

 

 図書館にてサワタリのノートは無事修復された。そこに書いてあったのはどうやら小説らしい。

「お前、小説なんて書いてたのか。ちょっと見せてみろよ」

 あたしはノートをつぶさに眺めた。

 

 

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彼岸少女

 

                       沢渡 **

 

 ぼくと篠田さんがドアを開けると、朝の学校の澄み切った空気が音を立てて濁った。いつだったかの化学の実験で見た試験管みたく、透明な教室水溶液がどす黒く変色した。

 はあ、憂鬱だ。

 

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 冒頭を読んであたしは思わず笑いだす。まるで初めてサワタリの家に言ったときみたいに、笑いが止まらなかった。

「はは。お前、あたしといるときのこと小説にするとか……あはは。傑作すぎるだろ。どれだけあたしのことが好きなんだよ」

「うん、好きだよ」

 告白されてしまった。でも流石はサワタリ、衝撃発言はそれだけにとどまらなかった。

「決めた、決めたよ。好きだからこそ言わなくちゃいけない」

 サワタリは今にも泣きだしそうな顔で、あたしに真実を告げた。

 

 

 

 嘘だ。そんなことあり得ないだろ。だいたい気付くだろ。

 ああ、そういや不思議に思うことがあったんだよ。なんでクラスメートはいきなりあたしを無視し始めたんだ? おかしいだろ。事前に「今からお前もいじめるからね」的なことを何か断っても良かったじゃないか。ユッコなんかは絶対そうする。

 

「篠田さんは、」

 

 家でもおかしかった。何であたしの部屋の前で話してるだけの母親に弟は噛みついたんだ? 不登校の娘を叱るくらいいいじゃないか。母親は何でクリニックに通ってるんだっけ? 幻覚が見えるから。何の?

(みーちゃんもねえ、可哀想にねえ……。学校にも行けなくなっちゃって。)

 

「篠田さんは、もう、」

 

 通学路の献花。リビングの一人足りない椅子。あたしだけ頑なに飛ばす担任の点呼。パズルのピースが一つずつはまっていく。ああ、そういうことかよ。

 

(実は僕、幽霊が見えるんだ)

 

 サワタリが変人扱いされるのも当然だぜ。ああ、恨むぜ、サワタリ。もっと早く言ってくれよ。あたしが、お前を助けた時に、もうとっくに。

 

(沢渡くん、もういいの。あなたのせいだなんて、皆もう思ってないよ)

 

 レイが死んだのはあなたのせいだなんて、皆もう思ってないよ。

 

「篠田さんは、もう、死んでるんだ」

 

 

 

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ええー、これで終わりかよ無能か作者? と思った方、是非11/25(日)に開催されるコミティア126でZ62b「春日夢想」にお越し下さい。この中編『彼岸少女』の続きが掲載された雑文集的な冊子を頒布する予定です。

 

同人の宣伝と思って書き始めたものの、結構が筆が乗ってしまいました。嶺の語り口が気に入ってしまった。某有名ミステリ映画のオマージュのつもりで書きました。結構自分でも気に入っています。因みに主人公の名前をローマ字にして並び替えると……まあいいやこの辺は雑文集で。気軽にコメントで感想とかくれたら嬉しいです。あと矛盾点とか表現の間違いとかあったらそれもお願いします。

 

というわけでサークル春日夢想は11/25のコミティア126、z62bでお待ちしています。よかったら御足労ください。二日後にはコミケの当落ということでめちゃくちゃ精神がすり減ってますが、なんとか原稿頑張ります。コミティアに来てくれる方は会場で会いましょう。それではこの辺で。

【宣伝】同人活動、本格始動


さて、いつの間にやら九月も後半に入って、残り少ない夏休みを満喫しているところですが同人活動の告知です。


先日コミティアの申し込みを終えて一段落つき、折角なので備忘録兼達成すべき目標としてこれからの足跡を軽く記しておこうと思います。

 

因みにTwitterアカウントはこちら、よかったらフォローしてください。

https://mobile.twitter.com/shunjitu_musou

 

11/25(日)

コミティア126

 

頒布予定物:

一次小説『Desire/Disaster(上)』

web小説サイト、カクヨムにて僕が連載しているネット小説を纏めたものになります。現時点(9/14)で累計4300PV突破、読者100人超! 割りとそこそこ自信作です。

 

簡単にあらすじを説明すると、悪魔と契約した12人の人間たちが次代の神の座を巡りバトルロイヤルを繰り広げるというお話です。既視感ヤバい。多分F○teが好きすぎたんだよ……

 

下にリンクを貼っておくので良かったらご覧下さい。作者個人の見解としては、一章(だけ)はめちゃくちゃ面白いと思います。それ以降はまあ……これから面白く出来たらいいですね。

 

Desire/Disaster リンク↓

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885814119

 

現在の進行ペースで行くと全三巻予定になりそうです…………まあ、売れなかったら続きを作るかは未定ですが。ネットで読めるならわざわざ買わんだろ、みたいな意見もあると思いますが、僕個人としてはどうしても自分の本を出したい(たとえ同人という形だとしても)ので、どうかご理解いただければ幸いです。

 

サークルカットはこちら↓


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表紙を特に頑張ります。同人誌は表紙が命と言っても過言ではないので。

 

 

 

12/31(月)

コミックマーケット95

 

本命はこちらです。出すのは僕が昔からずっと温めていた、アイマスの本好きアイドルによる文芸評論です。頼むから当選していてくれ…………。

 

頒布予定物

・『鷺沢文香と読む日本文学』

みんな大好き鷺沢さんが日本の文学作品を紹介する本です。レビュー本は所謂文豪の作品から近年のものまで、バランスよく選びました。僕は文学作品は不得手なので、原稿執筆作業はかなりの難航が予期されますが、頑張ります。

 

・『橘ありすと読む海外ミステリー』

みんな大好きありすちゃんが海外の推理小説を紹介する本です。レビュー本は古典を中心に選びました。ミステリー初心者にも分かりやすく、有名どころを取り上げていく予定です。ミステリーもありすちゃんもかなり好きなので、書けるのがとても楽しみですね。

 

サークルカットはこちら↓


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この短い期間に二冊、間に合うか不安ですが何としても間に合わせます。

 

 

昔からやりたいと思っていた同人を始めることができて、今はとても充実しています。文章や絵といった創作活動にも目覚め、受け身だった以前よりもずっと作品に対する鑑賞も変わってきたように思います。この活動を通してたくさんの人と関われたらいいな、という気持ちです。まだ慣れないことばかりですが、頑張っていきたいですね!

 

というわけで同人の告知でした。初めてのサークル参加、全力を尽くしますので、どうか御足労いただければ幸いです。まだ駆け出しですが、同人サークル春日夢想をよろしくお願いします。

 

 

 

 

【告知】同人サークル『春日夢想』、始めました!

 

「いつかコミケに売る側で出たい」

それが僕が初めてコミックマーケットに行った時の感想だった。

熱に浮かされた、とでも形容すればいいだろうか。オタクたちが犇めくあの有明の地に初めて赴いたとき、僕は確かに何かの「病気」に罹ってしまったのだ。

同人活動。一般世間から見れば「下らない」と一蹴されることが多いように思われるこの活動に、僕は冗談抜きで人生を賭けてもいいんじゃないかとさえ思った。

彼らは、誰より楽しそうだった。他の何よりも、自らの作品を世に出すという行為に酔い痴れているように思えた。そしてきっとそれは、とても幸福なことなのだろうなと、自分もあちら側に行きたいなと、二年前の冬に僕は思ったのだった。

 

そして今まさに、僕はあちら側に行こうとしている。

 

同人サークル、結成!!!!!!!!!!! 嬉しい!!!!!!!!!!!

 

以上。にしてもいいのだが、折角なのでサークル結成に至った経緯、感情を整理しつつ、目前に迫ったコミケの申し込み手続き(二十日まで)から一時の逃避を得るため少し駄文を書き連ねたいと思う。完全に自分のために書くので、受験体験記やさよ朝の感想のように起伏のある展開やオチは期待しないでください。

 

……それは僕がコミケ支度を整えていた八月十一日の夜から始まった。僕が寝ぼけ眼でTLを眺めていたところ、とあるフォロワーが「コミケでデレマス本を出したいなあ」という趣旨のツイートをしていた。僕は行動だけは早いので、早速「もし出してくれたら買いにいきます」との趣旨のリプを送った。それでなんだかんだ話していくうちに、いつのまにか同人サークル結成の運びになっていたのだから運命とは解らないものである。

 

最初は冗談なのかもなあ(失礼)とも思った。周りの人間には創作に興味を持っていそうな人間はあまりいなかったし、僕自身も過去に何度か同人活動をしようとしたことはあったのだが、仲間割れ()や企画倒れ()によってあえなく道を封じられていたのだった。

 

だけど、今回は違う。この五日間やり取りをして思ったのが、お互い「本気」だということだった。この手の感情は言語化すると途端に陳腐になり下がってしまうが、敢えて言うなら創作を介して人と繋がりたい、自分の作品を世に届けたいという思いは紛れもなく本物だったと言える。事実、時間はとても充実していた。

 

ここ五日間、時間が目まぐるしいほどのスピードで過ぎていった。申し込みに必要な煩雑な手続きも、高額な決済費用も、「同人活動」をするためならば全く惜しくなかった。

 

そして今、申し込みをあと少しで終えようとしている僕が感じているのは、「世界が開けていく」感覚である。自分が今まで知らなかった世界に飛び込んでいくときの、溢れんばかりの昂揚感。漸くやりたいことを見つけたというか、自分が行くべき場所が分かったというか。やっぱりうまく表現できない。

 

なんというか、有体に言えば、自分が昔からやりたいことが漸く叶えられそうで、とても感動しているわけですよ。なんかもうまともに文章が書けてない気がするけど、とにかく嬉しい訳ですね。

 

まあ、僕が同人に憧れていた理由として奈須きのこの『空の境界』(元は同人小説)が好きで好きで仕方なくて原作何週もして円盤も限定版で揃えていたのとか、僕が唯一最後まで買えたラノベ冴えない彼女の育てかた』が同人ゲームをコミケで売るべく頑張る話(穿ち過ぎ)だったのとか、色々同人をやりたかった理由はあったんですけど、やっぱり一番は「創作がしたい」からなんでしょうね多分。

 

だんだん文章が崩壊してきたので最後に告知をします。

 

恐らく、きっちりと申し込み手続きを完了し、そしてめでたく当選し、本を完成させられれば、次の冬コミで『鷺沢文香と読む日本文学』『橘ありすと読む海外文学』という本が出ます。タイトルを見れば解るように、デレマスの本好きアイドルたちが(彼女らの)お勧めの本をレビューしたり紹介したりする本になると思います。あまり本を読まない人にも分かりやすいように敷居は低めに設定するので、どうかお手に取ってもらえたら幸いです。

 

というか、買わなくてもいいからブース来て、頼む。お話するだけでも、フリーペーパー(間に合うのか?)かっさらうだけでもいいから。僕を特定したいでもいいから。お願いします。

 

あ、あと11月25日のコミティアにも出ると思います。こっちは完全なオリジナルで、サークル員が大量に書き溜めた小説や絵を放出する予定です。多分こっちは間に合いそうです。

 

ああ、なんかもう感無量ですわ。出来ることなら大学を卒業して社会人になっても、その先も続けたいですね。今からとても楽しみです。

 

最後に最近思い始めたことを一つ。それはどんなことでも無駄ではない(かもしれない)ということ。や、ずっと思ってたんですね、Twitterやって時間溝に棄てたわとか、オタク活動とか生産性ないわ、とかね。何気に意外とこういう一見無駄に見える者の中にこそ、「本質」みたいなものはあるんじゃないかとね、そう思ってしまったわけですよ。だって、Twitterやってなかったら多分こういう出会いとかなかったし。オタクじゃなかったらそもそもコミケという存在を知ることなく一生を終えていたかもしれないし。巡り合わせって大事ですね、本当に。今を大切にしよう。

 

では、同人サークルの結成のお知らせでした。頑張ります。因みにサークル名「春日夢想(しゅんじつ むそう)」は中原中也の詩「春日狂想」を捩ったものです。詩はあまり嗜まないのですが、お勧めされたので折角だし読んでみようと思いましたね。

それではまた。続報があったら更新します。